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2014 シーライトパブリッシング刊 |
めまぐるしさはジェットコースター級!
1970年代イタリア・コモ湖畔の田舎町“ベッラーノ”を舞台に、映画「ラストタンゴ・イン・パリ」の公開がきっかけで巻き起こる、とあるカップルとその周辺の人々のてんわやんや。そしていつしか物語は思わぬ展開に…
イタリア小説界きってのコメディ作家アンドレア・ヴィターリが贈る、はちゃめちゃでいとおしくてちょっと切ない群像劇!
原書"Un bel sogno d'amore" di Andrea Vitali, 2013 Garzanti
…あらすじ…
アデライデにはアルフレードという恋人がいる。この2人、そろそろ「結婚」の2文字が浮かぶくらいにはいい感じなのだが、一つだけどうしても乗り越えなければならない問題があった。それは…アルフレードが優柔不断で母親のいいなりになっていること!そのせいでなかなか進展しない関係に苛立ち始めたアデライデは、自分に言い寄ってくるイケメン不良青年のタッリャを利用して一世一代の賭けに出る。「私、ラストタンゴ・イン・パリはタッリャと観に行くから!」
果たしてアルフレードはアデライデの狙い通りにこの挑発に乗ってくるのか…それとも母の圧力に負けマザコンの烙印を押されるのか!?
一方不良青年タッリャは、警察の手をのらりくらりとかわしながら、あれやこれやと騒ぎを起こし続ける。そんなことでアデライデへの思いを遂げることはできるのかと思うのだが意外なチャンスが訪れて…
……
さあ、どうなるのか。一般的な小説であれば、この後は恋人たちの関係がこじれたり何なりしつつ、最後に結婚できました、めでたしめでたし、で終わるのですが、そこはヴィターリ!そう簡単に私たちを離してはくれません。めでたしめでたし(どういう「めでたし」なのかはここでは伏せますが)にたどり着くまでに、町の人たちの様々なエピソードが途切れることなく語られます。ラブストーリーあり、事件あり、人情あり。お節介なお隣さんに、抜け目のないバール店主、人情に厚い警察と間抜けな部下たちも出てきて大騒ぎ!
アルフレードの年老いた母、ベンベヌータの変化も見逃せません。信心深くて頑固で、息子のことを始終監視しているために“醜い猛犬”と影でアデライデから呼ばれてしまうこの厄介な女性にも、物語の中で驚くべき変化が現れます。どんな変化なのかは…きっとびっくりしますよ。さすがイタリア…いえいえ、さすが人間、全人類万歳!
読み終わったときには、すべての人が愛おしく思えるかもしれません。
イタリアが誇る喜劇作家の世界をたっぷりお楽しみください。
…同著者の既刊書…
『オリーブも含めて』
『ブティックの女』
『レモンの記憶』(いずれも久保耕司訳、シーライトパブリッシング刊)
<訳者のおまけ話>
私のヴィターリ作品の楽しみ方
ヴィターリ作品は登場人物が多く、 場面転換も速いのが特徴です。私など、彼の作品を読むときはいつも渋谷のスクランブル交差点のど真ん中で人間観察をしているようで、なんとも愉快な気分になります(笑)。名前もユニークなものばかりなので、それが楽しいのですが、日本人にはちょっと覚えにくいかもしれません。どんな意味の名前なのか、本書のあとがきで少しでも解説できたらよかったのかも、と今になって思ったりしています。またどこかで書いてみようかなぁ。
繰り返しになりますが、ヴィターリ作品は登場人物が多く、場面転換も速いのが特徴で、初めて読んだときはびっくりしました。でもそれこそが、彼の作品の魅力の一つなんです。原書のレビューを見ていても、イタリア人読者が「カオス!笑」という感じの書き込みをしていたりして、楽しんでいるのが伝わってきます。なんというか、混乱ウェルカム、とそんな感覚になれるのもヴィターリ作品の醍醐味!!なのかな、と思っています。
また、登場するのが個性も様々な愛すべきキャラクターたちばかりなので、よりどりみどりのラインナップからお気に入りの人物を探すのも私の楽しみの一つです。ちなみに『すてきな愛の夢』で好きな人物は、姑ベンベヌータ宅の隣に住んでいるおせっかいなティレッリ夫人です!もう、あんなことになるなんて、本当に(愛すべき)おせっかいなんだから!
以上、ヴィターリ作品にはこんな楽しみ方もあるんです。というおまけのお話でしたー。
……
さて、書きたいことが絞りきれず長い記事になってしまいましたが、ここまでお読みいただきありがとうございます!ブログを始めて3年、ようやくの訳書紹介でしたが、イタリア好きの皆様、読書好きの皆様のお手にとって頂けたら嬉しいです!!
商品はアマゾン、楽天に取り扱いがあります。(アマゾンは現在入荷未定になっていますが、版元様に確認したところ、ご注文があればすぐに対応していただけるそうです☺️)
↓こちらがアマゾンのリンク。初めていただいたレビューのなんと嬉しかったことか…
↓ 楽天は最近在庫が復活しました。嬉しー😝!!!しかし画像がうまく出ない…
長くなるので著者のアンドレア・ヴィターリ、そして彼の他の邦訳作品については改めて紹介したいと思います。
また覗きにきてくださいねー!