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2020-10-29

<訳書紹介>アンドレア・ヴィターリ『すてきな愛の夢』

今日は私の訳書を紹介します。
 
2014 シーライトパブリッシング刊
アンドレア・ヴィターリ『すてきな愛の夢』

めまぐるしさはジェットコースター級!

1970年代イタリア・コモ湖畔の田舎町“ベッラーノ”を舞台に、映画「ラストタンゴ・イン・パリ」の公開がきっかけで巻き起こる、とあるカップルとその周辺の人々のてんわやんや。そしていつしか物語は思わぬ展開に…

イタリア小説界きってのコメディ作家アンドレア・ヴィターリが贈る、はちゃめちゃでいとおしくてちょっと切ない群像劇!

 

 

 原書"Un bel sogno d'amore" di Andrea Vitali, 2013 Garzanti

 

あらすじ

アデライデにはアルフレードという恋人がいる。この2人、そろそろ「結婚」の2文字が浮かぶくらいにはいい感じなのだが、一つだけどうしても乗り越えなければならない問題があった。それは…アルフレードが優柔不断で母親のいいなりになっていること!そのせいでなかなか進展しない関係に苛立ち始めたアデライデは、自分に言い寄ってくるイケメン不良青年のタッリャを利用して一世一代の賭けに出る。「私、ラストタンゴ・イン・パリはタッリャと観に行くから!」

果たしてアルフレードはアデライデの狙い通りにこの挑発に乗ってくるのか…それとも母の圧力に負けマザコンの烙印を押されるのか!?

 一方不良青年タッリャは、警察の手をのらりくらりとかわしながら、あれやこれやと騒ぎを起こし続ける。そんなことでアデライデへの思いを遂げることはできるのかと思うのだが意外なチャンスが訪れて…

 

…… 

さあ、どうなるのか。一般的な小説であれば、この後は恋人たちの関係がこじれたり何なりしつつ、最後に結婚できました、めでたしめでたし、で終わるのですが、そこはヴィターリ!そう簡単に私たちを離してはくれません。めでたしめでたし(どういう「めでたし」なのかはここでは伏せますが)にたどり着くまでに、町の人たちの様々なエピソードが途切れることなく語られます。ラブストーリーあり、事件あり、人情あり。お節介なお隣さんに、抜け目のないバール店主、人情に厚い警察と間抜けな部下たちも出てきて大騒ぎ!

アルフレードの年老いた母、ベンベヌータの変化も見逃せません。信心深くて頑固で、息子のことを始終監視しているために“醜い猛犬”と影でアデライデから呼ばれてしまうこの厄介な女性にも、物語の中で驚くべき変化が現れます。どんな変化なのかは…きっとびっくりしますよ。さすがイタリア…いえいえ、さすが人間、全人類万歳!

読み終わったときには、すべての人が愛おしく思えるかもしれません。

イタリアが誇る喜劇作家の世界をたっぷりお楽しみください。

 

…同著者の既刊書…

『オリーブも含めて』

『ブティックの女』

『レモンの記憶』(いずれも久保耕司訳、シーライトパブリッシング刊)

 

<訳者のおまけ話>

私のヴィターリ作品の楽しみ方 

ヴィターリ作品は登場人物が多く、 場面転換も速いのが特徴です。私など、彼の作品を読むときはいつも渋谷のスクランブル交差点のど真ん中で人間観察をしているようで、なんとも愉快な気分になります(笑)。名前もユニークなものばかりなので、それが楽しいのですが、日本人にはちょっと覚えにくいかもしれません。どんな意味の名前なのか、本書のあとがきで少しでも解説できたらよかったのかも、と今になって思ったりしています。またどこかで書いてみようかなぁ。

繰り返しになりますが、ヴィターリ作品は登場人物が多く、場面転換も速いのが特徴で、初めて読んだときはびっくりしました。でもそれこそが、彼の作品の魅力の一つなんです。原書のレビューを見ていても、イタリア人読者が「カオス!笑」という感じの書き込みをしていたりして、楽しんでいるのが伝わってきます。なんというか、混乱ウェルカム、とそんな感覚になれるのもヴィターリ作品の醍醐味!!なのかな、と思っています。

また、登場するのが個性も様々な愛すべきキャラクターたちばかりなので、よりどりみどりのラインナップからお気に入りの人物を探すのも私の楽しみの一つです。ちなみに『すてきな愛の夢』で好きな人物は、姑ベンベヌータ宅の隣に住んでいるおせっかいなティレッリ夫人です!もう、あんなことになるなんて、本当に(愛すべき)おせっかいなんだから!

以上、ヴィターリ作品にはこんな楽しみ方もあるんです。というおまけのお話でしたー。

 

……

さて、書きたいことが絞りきれず長い記事になってしまいましたが、ここまでお読みいただきありがとうございます!ブログを始めて3年、ようやくの訳書紹介でしたが、イタリア好きの皆様、読書好きの皆様のお手にとって頂けたら嬉しいです!!

商品はアマゾン、楽天に取り扱いがあります。(アマゾンは現在入荷未定になっていますが、版元様に確認したところ、ご注文があればすぐに対応していただけるそうです☺️)

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長くなるので著者のアンドレア・ヴィターリ、そして彼の他の邦訳作品については改めて紹介したいと思います。

また覗きにきてくださいねー!

2020-10-06

マルヴァルディのBarLumeシリーズがついに!

前回ご紹介したイタリアの超人気ミステリー作家マルコ・マルヴァルディ(Marco Malvaldi)ですが、なんとこの10月、CSのAXNミステリーチャンネルで彼の代表作「BarLumeシリーズ」ドラマが放送されることになりました!!!

番組紹介ページはこちら。(『トスカーナ大衆酒場の事件簿』)

紙の本で持ってるのは三冊だった。




前々からこのシリーズの紹介をしたいなと思っていたのですが、ドラマがついに日本上陸と聞いて、やっと重い腰をあげました。これを書くにあたって、昔(っていうほど昔でもないけど)に読んだ1巻目「La briscola in cinque(5人ブリスコラ)」、2巻目「Il gioco delle tre carte(スリーカードモンテ)」を改めて読んでみましたがやっぱりおもしろーい。のです。


小説の舞台はトスカーナの架空の街ピネータにあるバール<ルーメ>。ここのオーナーバリスタ、マッシモと常連の仲良しじいちゃん4人組が色んな殺人事件を解決していくコミカルなミステリーシリーズです。

 

原作は全6巻+番外編2巻で、一応シリーズ完結したと聞いています。

(ちなみにドラマの方は、原作とは異なる順序でエピソードが構成されていて、うち半分くらいはドラマ用のオリジナルストーリー。)

 

私は前述の通りまだ1、2巻しか読めていないのですが(あとは…積ん読…)1巻目のエピソードはシーズン1の第4話で登場するので、映像としてどんな風に描かれているのか今から楽しみです。

 

 

さて。

もしこのドラマを見て「原作、時間ないけど一冊くらい読んでみたいなー」と思われた方がいらっしゃったら。

個人的に、ぜひ第2巻『il gioco delle tre carte』から読み始められることをお勧めします!

(あくまでも、時間ないから一冊、と言う場合ですよ🤗)

というのも、まずこの巻のエピソードはドラマの全シーズン通して全く採用されていません。

つまり、ドラマの雰囲気を頭に置きつつ、ドラマ化によるストーリー改変で受ける違和感などの影響を心配することがない。自分でイメージを膨らませながら読めるという利点があります。これが第一のポイント。

それから、第二の推しポイントとして、日本人がたくさん登場します。しかも重要人物です。おお?それ聞くと俄然気になりませんか?(笑)

↑2巻がドラマで採用されなかったのは多分日本人役の俳優さんを手配する問題などあったんじゃないかと野暮な想像をしてみたり。

 

ということで簡単に第2巻の内容をご説明しましょう!

****

主人公マッシモの住む街ピネータで化学分野の国際学会が開かれることになり、世界中から癖のありそうな学者たちが集まってくるところから物語は始まる。

そして学会初日、登壇者の1人である高名な日本人教授が会場で謎の死を遂げた。

バール<ルーメ>のオーナーであるマッシモは、ケータリングを頼まれてその会場にいたことから警察に協力を求められ、あれよあれよと言う間に事件に巻き込まれていき…。

というのが大筋。

その後、

日本人学者の死にはあるパソコンが重要な鍵になってくるらしい?

でも中に書いてあるの全部日本語じゃん…どうするの!?

と言う面白い展開が待ち受けています。これはページをめくる手が止まりません。化学やコンピューターに強いマッシモ(理学部数学科博士課程中退)が大活躍、さてどんな推理を導き出すかに注目です。

日本人をめぐる描写にはややステレオタイプなところもありますが、不思議とそんなに嫌じゃない、というか素直に面白いと笑えてしまう感じが私は好きです。そういうところに、もともと化学者である作者マルヴァルディさんの知性がうかがえるような気がします。(もちろん、化学者だから知性的、ということではないんですけど)

****

 

さて、ドラマは10月11日に4話一挙放送です。楽しみ〜!!

 (それにしても、このドラマに対するAXNさんの「おっさんずミステリー」という表現は、一体誰を指しておっさんと言っているのか!?!?ちょっと疑問なのでその辺も見て確かめねば!)

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