"Marie Curie Nel paese della scienza"
(マリ・キュリー 科学の国の人)
Ire'ne Cohen-Janca 作
Claudia Palmarucci 絵
2019年 Orecchio Acerbo 刊(イタリア)
87ページ
受賞理由はこちらのBologna Children's book fairのサイト(英語)からも読めますが、私もちょっと訳してみました。
「キュリーの人生を単に事実を並べ立てるのではなく、私と公、立場両方の面から描き出した心動かされる伝記。リアルな描写と歴史的な正確さを持ちながらも超現実的で、全体を通してポロニウムの放射線を表現した黄色が使われる。あちこちに散りばめられた古今のアート作品へのオマージュは、すべて巻末の解説にまとめられおり、科学とアート、両方の歴史を知ることができる作品」
読んだ感想ですが、まず思ったのが”ポロニウムの黄色”の威力の凄さ。
↑この黄色、蛍光色寄りのくすんだ黄色なのですが、反対色の青紫色がうまく使われているからか、とても印象に残ります。そして読んでいるとなんだか精神的に落ち着かなくなるのです…キュリーの研究者としての狂気が感じられるような色だな、って思いました。
登場人物たちの描写もこれまた凄い。変な例えかもしれないけど小学生のクロッキー画を見たときによくある、人物の表情にすごく惹きつけられる感じ…(ああうまく説明できない…)受賞理由に「リアルながら超現実的」とあって、どういうことかなぁ、って思っていましたが、なんとなくわかったような気がします。(怪しいぞ)
かわいらしい絵に慣れている子供たちなんかだと、ちょっとギョッとするかもしれない。
作者のIre'ne Cohen-Jancaはチュニジア生まれで、本作はフランス語からイタリア語に翻訳されての、イタリアでの出版です。
さて、ここから先は本の感想とは少し離れますが。
マリ・キュリーといえば、日本でも昔から、とてもたくさんの伝記が出ています。
苦境に負けず、たくさん勉強して、良妻賢母、共同研究者である夫の死を乗り越えて、女性で初めてノーベル賞を(しかも2度も)受賞するという偉業を成し遂げた人…ですよね。
昔はどれもこれも「キュリー夫人」というタイトルだったような記憶があります。
私も子供の頃、「キュリー夫人」を児童書や漫画などいろいろなバージョンで読みました。
そのイメージでいたので、今回のラガッツィ賞を見たときは「もうキュリー夫人は語り尽くされてたんじゃないのかな?(目新しさはないんじゃないかな)」と思いました。
ところが、この絵本が到着するまでに、予習を兼ねて近年出版されたマリ・キュリー関連本をいくつか読んで見ると、なんだか昔とはだいぶ異なる視点で描かれているような。
まず、キュリー夫人の本名はマリー・キュリーと覚えていたのですが最近はマリっていうこともあるんですね。あと、やたらと「夫人」ってつけない。(ただし、これは本人が「今日から私はキュリー夫人です」って言ったことがあるそうなので、一概に「変でしょ」的なことは言えないみたいですが)
そして、以前は「貧困」とか「夫を亡くした」ところからの頑張り、活躍がすごく強調されていたような気がするのですが(ごめんなさい、昔のキュリー本の内容をまだ確かめられていないので、ここではあくまでも個人の記憶で語っています)、最近はやはりジェンダーの視点からもっと深く切り込んでいるように感じます。不倫スキャンダルだとか、第一次世界大戦時に戦地で活動したこととかも、昔の本では読んだ記憶がなかったなぁ…(覚えてないだけかな?)
読んだジェンダー論関連ではこちらの本が面白かったです。
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